第254回 伸びる子どもの条件

この頃、職場に入ってきた次のような新人に手を焼く、という話をよく聞きます。

1.注意するとひどく落ち込む。

2.注意に反発する。

3.「どうもこの仕事は自分には合わないみたいです」などと、すぐに音を上げる。

4.理不尽な要求や叱責をする取引先や客にキレてしまい、せっかくの関係を台無しにする。

また、学生達と接している大学の先生にも、「最近は、我慢ができない者が多い」や、「すぐに『心が折れた』と言い出す者が多い」と感じる人が多いようです。また、学生達と話していて、「もうちょっと頑張ってみたらどう?」みたいなことを言うと、「いいんです。どうせ無理だから」「意思が弱いから無理です」「頑張ったっていいことないし」などという人もいるようです。

なぜ、このような若者が増えているのでしょうか。私は、『伸びる子どもは○○がすごい』榎本博明 著〈日経プレミアシリーズ〉を読んで、その本質をつかむことができました。それを理解するための一つのキーワードが「復元力〈レジリエンス〉」のようです。

この力は、子どもの頃に何か失敗したり、自分の思うようにいかないことがあっても「なにくそ!」と思い、それをはね返していくような力です。最近は、「叱るより、褒めて育てる」などの教育論が盛んなようですが、「悪いことは悪い」として毅然と叱ることは、とても大切なようです。

最近の幼稚園教諭を対象とした調査では、最近の親について、次のような感想を持つ人が多いようです。

1.過度に世話を焼く親が目立つ。

2.とにかく甘やかす親が目立つ。

3.自己中心的な親が目立つ。

4.マナーが悪い親が目立つ。

5.子どもをしつけるという自覚のない親が目立つ。

6.子どもの機嫌を伺うような親が目立つ。

もし、このような傾向が進んでいるとしたら、子どもの「復元力」を鍛える機会はどんどん少なくなっていることでしょう。「子どもを叱るのはかわいそうだ」と思って叱らないで子育てすると、マナーや常識が欠落した人間となってしまい、子どもが社会に出たとき、簡単に『心が折れた』などという状態になりやすいと思われます。

子どもは、自然の状態だと衝動のままに動きます。子どもを自由にさせるということは、衝動のままに動くことを認めることになりますが、それでは社会生活を送れません。そして、叱られることで「折れない心」が作られていきます。親が子を叱るということの根底には、「子どもが立派な人間に育って欲しい」という親の愛情があふれていることでしょう。

甘やかされて育ってしまった子どもは、社会に出てからそれを修正しようとしても、なかなか直らないという厳しい現実があるようです。親は、子どもの力を信じて温かく見守りつつも、「ダメなものはダメ」という厳しい姿勢で子どもに接することが大切なようです。