第239回 長友佑都のファットアダプト食事法

私はサッカーにはあまり詳しくないので、長友選手については「日本代表として3度のW杯に出場した素晴らしいプレーヤー」くらいしか知りません。ただ、健康オタクを自称する私としては、「体を劇的に変える28日間プログラム」という本のサブタイトルにひかれ、表題の本を購入して読んで見ました(出版社は幻冬舎)。

長友選手は、ブラジル大会を28歳という、サッカー選手として最も脂がのっている歳で迎えましたが、不調に終わりました。一般的に、アスリートは加齢と共にパフォーマンスが落ちるとされていますから、32歳で迎えたロシア大会での活躍は、期待されていなかったようです。しかし、彼はその大会で絶好調でした。その秘密がファットアダプト食事法にあったそうです。ファットアダプト食事法とは、脂質(ファット)をエネルギー源として上手に使えるようにする(アダプテーション)食事法だそうです。

詳しくは本書に譲るとして、ポイントは、「糖質の摂取をコントロールして、血糖値の乱高下を抑え、良質のたんぱく質と脂質を積極的に摂ること」です。彼は、食事の大切さについて、ブラジル大会が終わった後に気付いたそうです。つまり、「いくら練習しても思うように体が動かない,怪我も多い,これらはトレーニング不足ではなく食事の問題である」ということです。そのきっかけは、世界一のテニスプレーヤーであるジョコビッチ選手の本だったそうです。私もその本を読みましたが、「なるほど、トッププレーヤーは『何を食べるか』ということも勝つための重要なポイントなのだ」と知りました。

そこで、長友選手も食事についての研究を始め、専属のシェフも雇い、お医者さんのアドバイスも受けつつ、2年近くもこのファットアダプト食事法を実践し続けたそうです。その結果はめざましく、彼自身は「今までは、燃費が悪くて足回りもいまいちだった古めかしいセダンが、ガソリンでも電気でも走れるハイブリッドのスポーツカーに一気に進化したようだ」と述べています。

私自身も、長友選手とまではいきませんが、食事,運動,睡眠などが著作や仕事に大きく関係していることは実感しているため、この本の内容はとてもよく理解できました。この本を読んで、私が最も驚いたことは、「長友選手は栄養学を専門とするお医者さん並みに勉強し、研究している」ということです。どんなスポーツの選手であっても、一流となるには、ここまでのレベルに到達しなければならないのか、と痛感しました。一流選手になるには、肉体面を鍛えるだけでは足りず、精神面のコントロール、そして「勉強」も大いに大切なようです。