第521回 発達障害に苦しむ人々

最近,発達障害に苦しむ子どもが増えているという情報を知り,それについての本を読んだりして調べてみました。発達障害とは,生まれつきの脳の発達の仕方が特別であり,そのために行動や考え方,人との交流,学習面などに「普通」の人とは違う偏りや困りごとが現れる状態を言います。これは病気というより脳の特性と考えられます。

例えば,ASDの特性がある子どもでは,普通の人より感覚が過敏のため,周囲の音や光に強く反応する傾向があります。そのため,疲れやすくなったり,パニックになったり,癇癪を起こしたりします。具体的に言えば,そのような特性を持った子どもをフードコートに連れて行ったとします。するとその子どもはその場の強いにおいや,様々な音,強い照明に苦しみ,泣きわめいたりします。それを見て周囲の人は「いい加減にしなさい」とか,「なんで泣いているの」などと叱ったりするかもしれません。そのようなギャップは,「普通の人」が大音響を発しているディスコの中などに放り込まれたような状態なのかもしれません。

また,発達障害の特性を持った人の中には,社会人になった時,「何度言われても同じケアレスミスを繰り返してしまう」などの問題も起きます。そのような場合,まわりの人も本人もその特性を知っていれば,回避する方法も見出せます。しかし残念ながらそうでない場合には,本人が退職を余儀なくされたり,うつ病を発症するなど事態が深刻化する場合もあるようです。ここで大切なことは,発達障害の疑いが感じられた人はカウンセラーなどの診察を受け,適切なアドバイスを受けることです。
ある人は小さい時から「自分は頑張りが足りない」「人並みにできない」「人付き合いができない」と悩んでいました。しかし,医者からは「あなたは頑張りが足りないのではなく,人並みに合わせられなくて,ずっとがんばっていたのです」と言われ,「目からウロコ」だったそうです。つまり,その人はそこで初めて自分に長年憑りついていた魔物の正体が分かったと感じたのです。

さて,以上の話は発達障害の問題のごく一部分です。発達障害についてさらに詳しくお知りになりたい方は,『マンガでわかる!発達障害とグレーゾーンの人が見ている世界』柏淳著〈文響社〉をお読みになることをお勧めします。