第238回 日本の子ども達をとりまく憂慮すべき環境

最近、現代の子ども達をとりまく環境について、心配に思うことが多々あります。スマホなどの影響で、国語の読解力が落ちていることもその一つです。また、タワーマンションの上層階に住む子どもは、自然との触れあいが少なく、学力や情緒面にも悪影響が出ているなどの報告もそうです。また、歯の問題も深刻なようです。

私はある雑誌で、神奈川歯科大学助教である中村朋美さんの話を読み、その深刻さに驚きました。それは、今の小学1年生くらいの子どもから、20代後半くらいまでの大人に、顎の狭小化が顕著に見られる人が増えているということです。つまり、今の子ども達は顎が小さくなり、まるで宇宙人のような顔をした子どもが増えているというのです。そうなると、歯並びが悪くなり、矯正をする子が増えたりし、健康にも影響してきます。

では、一体なぜそんな子どもが増えているのでしょうか。ひとつには、軟らかい食べ物が増え、子ども達の食事のときの「噛む回数が減っている」ことにあります。咀嚼研究第一人者である斎藤滋先生によると、卑弥呼が生きた弥生時代の一食の咀嚼回数は、3990回だったそうです。しかし、現代は620回と、6分の1に減り、時間でみると51分から11分となっているそうです。そう言われてみると、昔の武士の顔は、エラが張った人が多いように感じますが、それも咀嚼回数に関係がありそうです。

噛むことの健康効果は数多くあるようで、それを分かりやすく伝えるために、学校食事研究会が「卑弥呼の歯がいーぜ」という標語を作ったそうです。それは次の通りです。
〈ひ〉肥満予防、〈み〉味覚の発達、〈こ〉言葉の発音がはっきり、〈の〉脳の発達、〈は〉歯の病気を防ぐ、〈が〉がんの予防、〈いー〉胃腸の働きを促進、〈ぜ〉全身の体力向上と全力投球

いかがでしょうか。
 
私も以前から咀嚼の大切さを知り、食事を口に入れたら必ず箸を置くことにしています。そして、30~50回は噛み、口の中の食べ物がドロドロになってから飲み込むようにしています。すると、胃腸の働きが良くなり、栄養も無駄なく吸収されると感じます。

最近は核家族化が進み、しかも両親ともに仕事をもつ人も多くなってきました。そのため、今の子ども達は、「孤食」になることが多く、食事のマナーも身につかず、いわゆる食べ物に口を近づけて食べる「犬食い」になっている子も多いようです。是非、以上のような「噛むことの大切さ」についても、若い保護者の方に伝えていきたいものです。