第525回 馬車と自動車
コンピューターの誕生は1940年代半ばです。当初コンピューターは「数を早く正確に計算する機械」として発明されました。そして,1950年代になると「コンピューターはもっと賢いことができるはずだ」と考える研究者たちが現れ,コンピューターで人間の知能を再現しようとする研究が始まりました。その後,2014年頃から登場し,2022年以降急速に広まったのが「生成AI」で,その代表例がChat GTPです。これは文章を生成するAIで,質問に答えるだけでなく,指示に応じて文章を書いたり,イメージを伝えるとイラストを作成したりもします。私自身も時々利用していますが,「なぜこんなにもうまく文章をまとめられるのか!」と驚くと同時に,「これがさらに進化すると,世の中は一体どうなるのか?」と感じます。
この状況や変化を一体どう捉えたら良いのでしょうか。私はそのヒントを京都橘大学工学部教授の松原仁氏の講演ダイジェスト文から得ることができました。それは「自動車が社会に登場した時代をイメージすれば良い」ということです。自動車が発明される以前の移動手段として利用されていたのは馬車です。でも自動車が出現すると,馬車はあっという間に消えて行ってしまいました。今がその時代と酷似しているようです。とすれば,私たちは時代遅れにならぬようにするためにいち早くAIを使いこなすことが必要なことなのかもしれません。それと同時に今後いろいろな問題も起きてくることでしょう。移動の中心が馬車だった時代には,運転免許や道路標識,制限速度もありませんでした。しかし,自動車が出現すると,事故なども多発し,交通ルールの必要性が出てきました。今後AIは便利さをもたらすと同時に,その一方でトラブルや悪用,詐欺などの新しい問題も起きてくるでしょう。私たちはそれらのことも念頭に置きながら,時代の流れに乗っていく必要があるようです。
