第223回 学校の「当たり前」をやめた。

さて、私は先日、表題にある本を読みました。これは、千代田区立麹町中学校長の工藤勇一氏によって書かれたものです。氏は、かつて山形で教員をされていた方で、この中学校の校長になられて5年になります。氏は公立中学校の校長にもかかわらず、「服装頭髪指導を行わない」「宿題を出さない」「中間・期末テストの全廃」「固定担任制の廃止」などの方針を打ち出し、それを実現しています。

これらの方針は、単なる思いつきではなく、氏が教員や教育委員会での仕事の経験を通じ、ずっと考え続けてきたものだそうです。これらの根底にある考え方は、「学校は何のためにあるのか?」という問いに対し、「社会の中でよりよく生きていけるようにする機関である」との結論から出たものです。そのために、子どもたちに「自ら考え、自ら判断し、自ら決定し、自ら行動する資質」つまり「自律する力」を身につけさせることを第一としているそうです。

例えば、運動会の開催についても、「生徒全員を楽しませる」というスローガンの下、企画・運営の全てを生徒に任せています。生徒は、このような体験を通じ、大人になったときにも役立つ「企画力」や「実行力」などの「自律する力」を身につけていきます。また、定期テストの廃止にしても、全て「自律する力を身につけさせる」というポリシーによるものです。そして、それらの革新の結果、以前に比べ、生徒の態度のみならず、学力も格段に向上しているそうです。

私はこの本を読んで、「定期テストはあって当たり前だ」などと、信じて疑わなかった自分の頭の固さをつくづく思い知らされました。何事においても大切なことは、「深く考えて、その本質を突き詰め、そしてその本質を具現するために、勇気をもって実行する」ことにあると感じました。塾の経営とは直接には関係ないかもしれませんが、ご興味のある方は、読んでみてはいかがでしょうか。

余談ですが、「もし私が経営していた塾の近くの中学がこんな方針の中学に変わっていったとしたら、自塾の方針をどのようにしていくだろうか」などについても考えてしまいました。