第187回 最近の子どもの国語力不足

夏期教材の展示会で、いろいろな先生とお話していると、共通して「最近の子どもの国語力不足」を嘆く声が聞かれます。例えば、塾で勉強中の生徒が先生に向かって「先生、トイレ!」などと単語のみを発するケースです。その先生は、敢えてその生徒に向かって「トイレ?それがどうしたの?先生はトイレではないですよ。」と返すそうです。このようなことは家庭内でも起こっていることでしょう。

家庭内で、子どもが母親に向かって「ママ、寒い!」と言ったとします。母親は気を利かせて「あらそう、じゃあエアコンの温度を少し上げるわね。」などと答えたとします。このような環境の家庭では、子どもの国語力は育ちにくいことでしょう。

また、「やばい!」という言葉を多用する子どもも気になります。語彙力の乏しい生徒は何でも「やばい!」で済ませていないでしょうか。同じ言葉ばかり使わず、その場にふさわしい日本語をあれこれ探し、それを使おうとすることで、初めて国語力が伸びていくのではないでしょうか。極論かもしれませんが、何でも「やばい!」で済ませてしまう子どもは人間よりも動物に近いのではないかとさえ感じてしまいます。つまり、犬が飼い主に向かって「ワォーン!」と鳴くか「キャイーン!」と鳴くか、その違いで、相手に自分の状況を察してもらうようなイメージを私は抱いてしまうのです。

さて、話は飛びますが、私共が今編集中の『ろんりde国語』という教材は、「Kip学伸」という東京の国語専門塾が開発したものです。その教材では、まず「文の中から述語を探し、次にその主語は何かを考え、それを抜き出して書く」というトレーニングを徹底させるところから始まります。私はこの教材を見たとき、「塾における国語教育はまずここからだ!」と直観しました。英語学習においても、主語、述語の関係を理解していない生徒はたくさんいます。そのような現状を打破するには、まず日本語を論理的に理解する力の育成からだと思います。

そこで、私はKip学伸さんにお願いし、その教材を当社で編集し、発刊する許可をいただきました。そして、来年の発刊にこぎつけました。