第174回 子どもたちの論理的思考力
今回は『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』から、ある調査結果をご紹介します。この本の著者である新井紀子氏が所属する日本数学会は、2011年に「大学生数学基本調査」を行いました。それには、全国の48大学,6000人の大学生(主に1年生)が参加しました。大学生のレベルは、国公立S,A,Bと私立S,A,B,Cの7ランクです。
問題は5問で、例えば次のようなものです。偶数と奇数を足すと、答はどうなるか。次のうち、正しいものを選び、次にそうなる理由を説明しなさい。
(a)いつも必ず偶数になる。
(b)いつも必ず奇数になる。
(c)奇数にも偶数にもなる。
この問題の正答率は、34%にすぎなかったそうです。
答えの例とすると、次のようなものも多くありました。
・全部やってみたらそうだった。
・2+1=3,4+5=9のようだから。
・三角と三角を足したら四角になるのと同じで、四角と三角では四角にならないから。
この問題に対し、満足のいく答えを書けたものは、国立Sクラスの大学生のみで、他のクラスの解答は、惨たんたるものだった。
他の4問に対する解答の状況も、同様のようで、筆者は「どこの大学に入学出来るかは、学習量でも知識でも運でもない。論理的な読解と推論の力なのではないか。」と結論付けています。皆さんはこの結論に対して、いかがお考えでしょうか。
多くの塾では、保護者の期待に応えるため、定期テスト対策を強化し、日常の生徒の成績アップを重視しています。しかし私は、自塾生の大学入試のことや、その後の進路まで考えると、「論理的思考力の強化」のような「骨太の指導方針」を持った塾の存在も大切なような気がします。そのような方針を世の保護者に訴えかけ、賛同してもらうことは、大変なことかもしれませんが、AI時代をたくましく生き抜く子どもたちを育てるには、その力の育成が大切なように思います。