第149回 すごい人
宮城県仙台市にある福聚山慈眼寺で住職をされている、塩沼亮潤さんという方をご存知でしょうか。氏は、小学5年のとき、テレビ番組で酒井雄哉師が挑んだ「千日回峰行」を知ったそうです。そして、「いつか自分も!」と思い、高校卒業後、奈良県吉野の金峯山寺で出家しました。
そして23歳のとき、大峯千日回峰行に臨みました。これは、金峯山寺から24㎞先にある山上ヶ岳頂上まで、標高差1355mの山道を往復48㎞、千日歩き続けるという修行です。毎朝午前0時半に、おにぎりを2個だけ持ち、春でも氷点下となる山頂まで向かいます。足の爪は割れ、時には極限状態の中で、幻影を見たりするそうです。これらに打ち勝ち、氏は1999年に大峯山1300年の歴史で2人目となる満行を達成しました。
この事実を知って私は、昔6月に登った標高1721mの、北海道にある利尻山登山を想い出しました。登る高さは同じくらいで、6月といえども、8合目より上は吹雪で、前も見えない程でした。ガイドさんについてもらい、完璧な装備をしていても、足が雪に埋もれたり、強い風で体温が奪われたりと、大変な思いをしました。とても厳しい山行で、朝4時出発で、帰り着いたのは夕方の4時でした。
登山終了後、ガイドさんからは、「これができたんだから、あとはどんな山でも登れるよ」と褒めていただきました。帰ってから宿ではゆっくり風呂に入り、おいしい夕食に舌鼓を打ちました。
一方、塩沼氏は、このような山行を1年のうち4ヶ月ぶっ続けで行い、9年間かけて達成したのです。私は、前述のような利尻山登山の経験があるだけに、氏が行った修行のすごさをひしひしと感じました。