第117回 「おもてなし」と「ホスピタリティ」の違い

相手のためを想って相手に尽くすことを、日本では「おもてなし」といい、西洋では「ホスピタリティ」と言います。でも、その中身は少し違うようです。では、その2つはどこが違うのでしょうか。それについて、(株)ことほぎ代表取締役の白駒妃登美さんの文章を読み、「なるほど」と思ったので紹介します。

まず、西洋の「ホスピタリティ」は、「人に対してなされる」ものだそうです。相手が人なので、人の目に見える所にしか心を尽くしません。だから例えば、ホテルの掃除にしても、人の目に見える所が中心です。そのため、かなり格式の高いホテルでも、人の目に触れないベッドの下にホコリがたまっていることがあるようです。

その一方で、日本の「おもてなし」はどうでしょうか。それは、「相手に対して」ではなく、「神様に対して」だそうです。確かに日本人の心の中には、誰も見ていない所でちょっと悪いことをする場合でも、「天から神様が見ている」と思い、うしろめたく感じるという心があります。

このような心の構造があるので、掃除にしても、人の目が触れないところでも、徹底して行うことになるそうです。確かに、日本の職人が作る工芸品や大工仕事でも、決して人の目に触れない所まで、手を加えているという習慣があります。それはやはり、日本人のおもてなしや行動には、「おもてなしの相手は神様である」とか、「誰も見ていなくても神様が見ている」という心情が通っているからかもしれません。