第64回 トムソン・ガゼルの行動②

このガゼルの話を引用して,ある人は私に「利己主義」と「利他主義」のことを教えて下さいました。一般的に,利己主義というと「自分中心で,自分の都合のいいことしか考えない」と思われています。また,利他主義というと,「自分自身を犠牲にして,回りの人のために尽くす」と考えられています。しかし,別の見方では,「利己主義を追求することが終局的にまわりの人を幸せにする」とも考えられています。

その考えをこのガゼルの話に当てはめてみます。ライオンの前に跳びだしたガゼルは,利他主義のように見えますが,その根底は利己主義です。つまり,「自分の持って生まれた,または磨き抜いた能力を生かす」という点においては,利己主義なのです。その利己主義を貫き通す結果として,仲間の皆が助かるという「利他」につながるというのです。

ここで一番大切なことは,人の役に立とうと考える前に,まずは「利己を貫くこと」。つまり,「自分自身の能力を高めたり,絶えず成長させることを心掛けること」だそうです。

確かに,スポーツでも勉強でも仕事でも,自分自身の能力の向上を目指していけば,結果的に人を楽しませたり,人の役に立つことができます。特に若い人々においては,「自分自身の能力を高める」ということに,最も力を入れるのが良いように思います。