第555回 お互いを助け合う社会

皆さんは,2014年に世界最年少でノーベル平和賞を受賞した,マララという女性を覚えておられるでしょうか。彼女は当時17歳でした。2008年,パキスタン北部をイスラム原理主義組織「タリバン」が占拠しました。タリバンは「女性に教育は要らない」と主張し,女の子が学校に行くことを禁じました。それに対してマララさんは「女性にも教育を!」という主張を,自分の名を隠してインターネットで発信し続けました。

そのことがあったため,2012年10月にマララさんは学校の帰りにタリバンに銃撃されました。銃弾は頭部を貫通し,顎と首の間で止まり,手術は困難を極めました。しかしその大手術の後,なんと彼女は奇跡的に一命を取り留め回復したのです。そしてその翌年,マララさんは国連で歴史的な演説をし,その結果ノーベル賞を受賞しました。

このマララさんの驚異的な回復力は何だったのでしょうか。それは,「自分のことしか考えない人」と違い,絶えず「世界中の子どもたちのことを考えている人間」だったからだと言えるようです。絶えず他人を思いやる心を持っている人は常に無限のエネルギーに満ちており,体の免疫力,抵抗力,回復力というものが脳から絶えず出ているようです。

さて,1980年の国の統計によると,家族がいる家庭が全体の6割を越え,単身世帯は約20%でした。これが40年後の2020年になると,全体の約4割が単身世帯となり,家族がいる家庭は半減しました。
このような現実の中で,社会の人々が楽しく生きられるために大切なことは何でしょうか。それは「助けて!」と言えるだけでなく,誰かから「助けて!」と言われる環境を作ることのようです。今の世の中では,「他人に迷惑をかけないで,自分で何でもやるのが正しい」というような風潮があります。ここで大切なことは「町を大きな家族のように考え,助け合って生きる社会を作る」というような発想のようです。

この文章は,認定NPO法人抱樸(ほうぼく)理事長である奥田知志氏の,日本講演新聞の講演ダイジェスト文をもとに書いています。氏は福岡市のとある場所に「希望のまち」の拠点施設を作り,「助けて!」と言い合える場を作ろうとしています。「自分さえ良ければいい」「何事も自分だけで解決すべきだ」という観念を打破し,人間本来の「お互い助け合いながら楽しく生きる」という社会がぜひそこに誕生して欲しいと思っています。