第554回 熟睡力
皆さんは日々熟睡できていますか。もしかすると世の中には,睡眠で悩んでおられる方も多いかもしれません。そこで私はオランダの睡眠科学者,メライン・ファンデラール氏が書かれた「熟睡力」<新潮新書>のダイジェスト文を読んでみました。
興味深かったことの1つは,原始人類の睡眠を推測するために,現代の狩猟採集民の行動を通じて調べたことでした。ある調査グループは,タンザニアのハヅァ族の睡眠と覚醒を調べました。するとハヅァ族の平均睡眠時間は6時間15分で,就床時間は9時間10分でした。つまり,ハヅァ族の人々は夜中にほぼ2時間半ほど覚醒していたというのです。
ハヅァ族は夜中に横になったまま,2時間以上目を覚ましていても,それは眠るか眠らないかということで,何も気にしていないということのようです。これを知ると,「夜中に目が覚めてしまい,寝られない」という現代人がいても,それは普通のことかもしれないとも考えられます。
さて,一方では「睡眠は8時間が基準である」という説もあります。この説は,18世紀末~19世紀初頭の英国の産業革命が関係しているようです。その頃の人々の多くは,週に6日,10~16時間労働が当たり前でした。その現実を見て,紡績工場経営者から社会革命家に転身したロバート・オーウェン氏が「労働は8時間,8時間はレクリエーション,8時間は睡眠に当てよう」というスローガンを打ち出しました。そのキャンペーンを張ったところから,「睡眠は8時間」という説が広まったようです。
この本の後半には「より良い睡眠を獲得する方法」など,有益な情報が満載のようです。睡眠に悩んでいる方にはお勧めな本であろうと感じました。
