第538回 日本食の奥深さ
皆さんは時には懐石料理などを食べられることでしょう。その時,途中で刺身が出てきますね。そして,その刺身には菊の花が添えられていることでしょう。ところで,その菊の花の名前や菊の花が添えられている意味はご存知でしょうか。
菊の花の名前は「もってのほか菊」(略称,もって菊)です。ご存知の通り皇室の紋章は菊の御紋です。「天皇陛下の菊の花を食べるなんてもってのほかじゃ」ということで,そんな名前になったそうです。
さらに,その花や刺身の食べ方にも作法があります。
まず,箸を持つ前に菊の花を手に取ってその花びらを刺身の上に一枚一枚散らし,刺身の醬油にも浮かべます。そして,わさびを箸でちょっとつまみ,そのわさびを刺身の上に乗せます。次に菊のはなびらと大根のツマを刺身と一緒に醬油につけて食べるのです。
なぜなら,菊の花には解毒作用があります。そのため冷蔵庫も氷もない時代に食あたりを防ぐ目的で重宝されたというわけです。
今日本では,農家さんや漁師さんが高齢化し,今後は地域で採れたものが流通しなくなるのではと懸念されています。かわりに,今一番売れている魚は,ノルウェー,チリ,ロシアから輸入されているサーモンだそうです。
その輸入サーモンがどんなに売れても,日本の漁師さんには一円のお金も入りません。こんな実状を知ると,もっと日本食のことを知ったり,地産地消を心がけたりする大切さを感じます。
なおこの文章は,〈一般社団法人〉食育日本食文化伝承協会 代表理事 和食の匠 梛木(なぎ)春幸氏の講演ダイジェスト文を参考にしています。
