第518回 いただきます
多くの日本人は食事の前に「いただきます」という言葉を唱えていることでしょう。さて,「いただきます」の深い意味とは何なのでしょうか。「今日も食事にありつけて,ありがたい!」という感謝の気持ちもあるでしょう。さらに,そのもっと深い意味としては,「穀物,魚,肉,野菜などに宿っている『命』をいただくことで,私達は生かされています。私はその事実に深く感謝します」という考え方につながることでしょう。
小さい頃ご飯茶碗に一粒でもご飯粒を残すと,「このお米の一粒一粒にお百姓さんの苦労が詰まっているんだよ。だから一粒でも残してはいけない」と両親から諭された方もおられると思います。これをさらに深めていくと,次のように考えることができるでしょう。
世の中のものはすべてつながっている。例えば米一粒にしても,お百姓さんの努力のみならず,肥料や農機具を作る人,米を運送する人,米を販売する人など,数多くの人々の働きによって,食することができる。そして,そのつながりが一か所でも断ち切られると,我々はそれを得ることができない,と。このように考えていくと,「いただきます」という言葉は,この世のすべてのものに対して,感謝するという気持ちで発せられるべきなのかもしれません。
私はこのような考えを『いただきます。人生が変わる「守衛室の師匠」の教え』喜多川泰著〈ディスカバー〉という本から学びました。読んでみて,とても味わいのある本だと感じました。
最近,パソコンの画面ばかり見ていて,本から遠ざかっていましたが,久々に本と向き合ってみると,読書の大切さや奥深さが再認識できました。