第500回 特色ある私学の英語教育
2025年4月28日の日経新聞に「特色ある私学の英語教育」という表題の記事が載っていました。この記事は毎週ある塾の先生が書いておられるもので,塾の内情やそこに通う生徒の様子がとてもよくわかり,参考になっています。
リコ(仮名)は,英語教育に力を入れている中高一貫校に合格しました。
入学してみると,帰国子女の生徒も多く,授業の多くはオールイングリッシュで進められていました。どちらかというとリコは理詰めで物事を考えるタイプのため,英語のしくみが分からないまま,英語まみれにするというこの学校の教育法についていけず,高校に進学するころにはすっかり英語嫌いになってしまいました。
そこでリコは困った末に塾の門を叩いたのです。塾の先生はその原因をすぐに突き止めることができました。リコの英語が不振な原因は,英語の基本構造や文法の基本があやふやのまま,どんどん先に進められてしまったためだということです。そこでその塾では,英文法を基礎から理屈で教えることを徹底しました。するとリコの英語力は急速に伸びていき,結果的に難関私立大の文系に合格することができました。
私はこの記事を読んで,この事例は今の小・中学校の英語教育の問題点とそっくりだと感じました。今の英語教育では,英文法指導はそっちのけで,SDGSのような斬新な話題がどんどん扱われます。このような指導法では,英語嫌いの生徒を急速に増やしてしまうように思います。
小社では,英文法を基礎からコツコツと積み上げる方式の『ステップ式英語』という教材を発刊していますが,近年この教材の人気が少しずつ高まっています。そのような傾向も今の英語教育の問題点を映し出しているものの一つかもしれません。