第491回 問題行動を起こす子どもたち
先日,日本講演新聞でスクールカウンセラーの堀井智帆氏の講演ダイジェスト文を読みました。氏は元福岡県警少年育成指導官で,延べ2千人の非行少年と向き合ってきました。非行少年と呼ばれる子どもたちはなぜ問題行動を起こすのでしょうか。「愛情の反対は無関心」と言われますが,私たちにとっても自分に関心が向けられていないという状態は一番辛いものです。だから彼らは,「俺はここにいるぞ!」という自己表現を根底として,盗みや暴力,いじめ,リストカットなどの問題行動をとるようです。氏は活動を通じて,「問題行動の始まりは,小学校時代よりさらに前の幼稚園や保育園時代にあるのでは?」と考えています。
子どもは大人との様々な関わりを通じて,抱きしめられる温もり,自分の気持ちを分かってもらえる喜び,自分が注目を浴びる嬉しさ,たくさん遊んでもらう楽しさを感じながら育ちます。氏はこれを「プラスの関わり」と呼んでいます。
一方,叩かれる痛み,親の離婚や死別など家族の形が変わる悲しみ,自分の気持ちを分かってもらえない辛さや怒りも味わいます。氏はこれを「マイナスの関わり」と呼んでいます。
子どもたちはプラスとマイナスの関わりがごちゃ混ぜになった中で育っていきますが,やがてそれが総決算される時がきます。それが「思春期」です。その時期にプラスを多く持った子は自立できますが,マイナスの方がプラスより多くなった子はそのままでは自立できません。すると彼らは,乳幼児期に戻ってプラスの関わりをもらおうとします。その時に起きる行動が問題行動となります。このときふつう,周りの大人は彼らに対し怒ったり,叱ったり,見放したりします。その結果,子どもはマイナスをプラスに転じられず,ますます落ち込んでしまい更生できません。
そのような子どもや乳幼児期や小学生の子どもに対して,プラスの関りをするための大事なコミュニケーションのポイントが3つあります。それは「スキンシップ」「目を合わせる」「名前を呼ぶ」だそうです。成人同士でも,好かれていないと感じる相手から目を逸らされたり,親しく声をかけられなかったら,寂しい気持ちになるものです。私たちが小さな子どもから思春期の少年少女に至るまで,強く心がけるべきことは,絶えずその3つを実行することのようです。