第462回 ディズニーの秘密

今日のビジネス環境は,人手不足,リモートワークの定着,テクノロジーの変化などの影響で,急速に変化しています。そのため今後は,新しい働き方への適応が求められています。そのような状況を踏まえると,企業はこれまで以上に明確なビジョンを持ち,社員一人ひとりの能力を最大限に引き出し,全員を活躍させる「しくみ」を作っていく必要があるでしょう。
その問題を解決するヒントになるのが『どんな人も活躍できる ディズニーのしくみ大全』大住力著〈あさ出版〉の中にあると感じます。氏は大学卒業後(株)オリエンタルランドに入社し,約20年間人材教育などに携わってきました。この本を読むと,人材育成のポイントや活力あるチームをどう作っていくのかがよくわかります。
一例を挙げれば,「仕事についての考え方」です。仕事というと「目標に向かってタスクを細分化し,着々とタスクをこなしていく」というようなイメージがあります。しかし,ディズニーでは「仕事は2ステップで作り上げていくものだ」と考えています。
1つは「量的仕事」で,これは「必ずやらなければならない仕事」のことです。塾で言えば,「時間通りに授業を始め,整然と本日の指導内容をこなす」などが挙げられることでしょう。もう1つは「質的仕事(ミッション)」で,これこそが「本来の仕事」です。塾で言えば,「いかにわかりやすい授業をするか」とか,「生徒を引き込む話術を磨くか」など,言わば自分の頭で考えねば出来ないことを指します。
ウォルト・ディズニーの有名な言葉に「ディズニーランドは永遠に未完成である」というものがあります。量的仕事のレベルを上げ,質的仕事を絶えず高めるように心がけていけば,仕事は永遠に未完成と言えます。この本は「強くて理想的な組織を作りたい」などと切望している方には,大変参考になるのではないかと感じました。