第463回 言葉使いに潜む心理

先日私は,営業パーソン育成名人として有名な中村信仁氏の文章を読みました。氏は無類の蕎麦好きで,出張先でもよく蕎麦屋さんに立ち寄ります。ある都市の蕎麦屋さんで,いつも通り「盛り蕎麦の大盛り」を頼んだところ,店主から「大盛りは150円増しになりますが大丈夫ですか?」と聞かれました。そこで氏はいたずら心も出して,「多分大丈夫だと思います」と応じました。

皆さんはこの店主の言葉使いに対し,どうお感じになるでしょうか。私には「あなたは何か貧乏そうに見えるけど,150円増しでも払えるの?」と思われているようにも感じました。氏も同様な想いから「財布の中を確認していないけれど,多分払えると思うよ」という感じで返したのでしょう。
最近この「大丈夫ですか?」というフレーズをよく聞きますが,こういった場合「150円増しになります」とか,「~になりますが,よろしいですか?」と伝えた方がいいのではないでしょうか。
また最近はやたら丁寧過ぎたり,「さ入れ言葉」を多用する言い回しも気になります。
例えば,何かのセミナーの開始時などの「では時間になりましたので,これからセミナーを始めさせていただきたいと思います」というフレーズです。なぜ「では時間になりましたので,これからセミナーを始めます」ではいけないのでしょうか。後者の方がよほどシンプルでスッキリしていて,相手に伝わりやすいことでしょう。

前者のような言い回しの背景には,どのような心理状況があるのでしょうか。私には「持って回った言い方をすることで,周りの人との軋轢(あつれき)や衝突を回避したい」というような,後ろ向きの心理が潜んでいるような気がしてなりません。やはり私は「これで私のブログを終わらせていただきます」より,「これで私のブログを終わります」という言い回しの方を使い続けるつもりです。