第450回 静かに退職する若者たち
先日私は『静かに退職する若者たち』というタイトルの本のダイジェスト文を読みました。私の会社では「若者」と呼ばれる年代のスタッフがおりませんので,直接にはわかりませんが,以前大学の教授をしていた友人に以下のような話を聞き,今どきの大学生の考え方に驚いたことがあります。
例えば大学の講義で,「何か質問はありますか」と問いかけても,まず返答はありません。自分だけが反応すると,目立ってしまうからです。また,もし講義中に一人の学生を褒めようものなら,後で「皆の前で褒めないで下さい」と言われることすらあるようです。多くの大学生は自己肯定感が低く,自分に自信がないため,人前で褒められることに「圧」を感じるようです。
この本の著者によれば,今の学生は対大人向けコミュニケーションの定番スタイルのパターンをもっているとのことです。例えば,「何かあったらいつでも相談してね」と言われたら,「はい,ありがとうございます」と卒なくその場に適した返答をするなどのパターンです。つまり,本音を明かさず,目立たず,その他大勢の中に埋もれていたい,などの傾向です。これを「いい子症候群」と呼ぶそうです。この傾向をもつ若者の中には,「一定の意欲を見せつつ,仕事を卒なくこなすが,それ以上の目立つ行動はしない」とか,「大きな理由がないようなのに退職してしまう」などのタイプの人もいるようです。
このようなタイプの若者に対して,上司が何よりも優先して鍛えるべきスキルは,「フィードバック」だそうです。例えば,新人の若者が会議で資料を提出して発表したとします。その時に行うべき上司のフィードバックの例は次のようなものだそうです。詳しくは本書に譲りますが,このフィードバックには5つのポイントが押さえられているとのことです。
「さっき会議で出した資料の冒頭の部分,私としては読みやすくてすごく良かったと思う。あれ,誰かに教わったの?それとも自分で考えたの?」
私たちの若い頃ならば,「仕事は上司のふるまいをよく観察して,盗んで覚えろ」などの風潮が一般的でした。しかし最近は,ここまで気を遣って腫れ物に触るように接しなければ,長続きしてもらえないようです。「すぐ会社を辞めてしまって,次に行ってもまた同じことにならないだろうか。そんな若者に明るい将来が控えているのだろうか」などと思ってしまうのは,単なる年寄りの老婆心なのでしょうか。