第451回 消化管の不思議

皆さんは学校や塾での理科の先生だと想像して下さい。中学2年の生物の単元では,動物の胃や腸の消化管について学習しますが,皆さんならそれについてどのように教えるでしょうか。

「口から入った食べ物は体内の胃や小腸を通じて栄養が吸収され,便となって体外に排出される」
もしこのような教え方をしたのであれば,生徒たちがその授業を興味をもって聞いてくれるのはなかなか難しいのではないでしょうか。ではこれを,次のように教えるとしたらどうでしょうか。

「皆さん,『食べ過ぎてお腹が痛い』って経験,したことあるよね。その時の『お腹』って,体の中にあると思っている人も多いかもしれないね。でも実は胃にしても腸にしても,消化管は体の『中』ではなく,体の『外』にある器官なんだよ。例えてみれば消化管は『ちくわの穴』と同じだ。つまり,消化管は口と肛門で外界とつながった,一本の中空の管なんだよ」と…。

つまり,腸などの消化管は,外界と接した人間の皮膚と同じと考えられるのです。消化管の粘膜はとても繊細で,ホルモンの分泌や免疫器官の役目も担っています。

詳しいことは省きますが,多くの人は(私もその一人ですが…)暴飲・暴食や,よく噛まずに食べ物を飲み込むなどの行為を通じて,消化管に負担をかけることばかりしがちです。消化管の役目を考えれば,消化管の粘膜を大切に保護することは,お顔を念入りにお化粧することとはまた別の大切さがあるようです。