第434回 子どもの脳の育て方
私自身には,もう関わりのないことになってしまいましたが,塾を経営されている皆さんや,子育て中の方々の参考になればと思い,『子どもの脳の育て方』という本を読んでみました。著者は,人工知能研究者,脳科学コメンテイターである,黒川伊保子氏です。氏の著書には『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』〈講談社+α新書〉などがあり,私もそれらを楽しく拝読しました。氏はご自分の息子さんを脳の研究対象のように考えて,育てようとされました。氏にとって「いい脳」の持ち主とは,「幸福の天才」であり,「頭もいいけど,それ以上に運のいい人」です。
具体的に言うと,いつもしみじみと幸せそうで,常に好奇心と意欲を失わず,健康で,穏やかで温かい。おっとりして見えるのに,決断は早い。集中力があり,短い言葉に説得力がある。頼りがいがあって飾らない人柄なのに,なめてかかれない威厳を持っている。そして,いつも何かに感謝している。
氏は自分の子どもを,以上のような子になるよう育てたいと思っていました。具体的な子育ての仕方や,生活上の注意点は本書に譲りますが,読んでいて「なるほど!」と思うことがたくさんありました。第1章では,早寝・早起き,朝ごはん,運動,読書の効能が述べられています。また第3章では,0~2歳,2~3歳,4~7歳,7~8歳,9~12歳,13~15歳ごとの育て方のポイントについて書かれています。また,AI時代の子育てに欠かせないセンスにも触れられていて,興味深い内容となっています。これからの子育ては,今までの価値観である「人の言うことを聞く,良い子」を育てることを目的にすべきなのでしょうか。あと20~30年後の世界ではどんな資質を持った人間が求められていくのでしょうか。この本を読んで,そんなことも考えながら,子育てに向き合っていくことも大切なのだ,と感じました。