第430回 成長する大人脳

皆様におかれましては,日常生活において次のような症状は出ておられませんか。

・立ち上がった瞬間,何をしようとしたのかわからなくなる。
・会話をしているとき,すぐに言葉が出てこない。
・一度に同じことを並行して行うマルチタスクが苦手になった。
・昔に比べて怒りっぽくなった。
・スマホやパソコンに触っていないと不安になる。

このような症状が当てはまる場合,「歳だし仕方がない」と納得してはいけません。加齢による影響は否定できませんが,むしろ可能性として高いのは「脳の劣化」です。脳の働きが悪くなっているか,脳のバランスが歪んでいるのが原因かもしれません。

その背景として考えられるのは,デジタル機器への依存です。パソコンやスマホは,人間の「脳の力」という大切な働きの一部を代替してくれるようになりました。そのため,メモをして忘れないようにする,努力して覚えるなどのことは,極端に減りました。脳は日々変化し,死ぬまで成長し続けます。そして一人として同じ脳はなく,脳はその人の人生の集約とも言えるでしょう。

私は「教材を作成する」ことがメインの仕事ですから,「いかに脳を活性化させ,最高の状態に保持し続けるか」に注意をはらっています。そこで最近,『一生成長する大人脳』医学博士 加藤俊徳著〈扶桑社〉という本を読んでみました。前述の意見は,加藤氏の見解をもとにしたものです。
さて,2020年から始まった新型コロナウィルス感染症の流行拡大により,人と人が触れ合う機会が失われ,人々の生活スタイルが一変しました。特に「動かない」ことや「光を浴びない」ことなどにより,うつ状態の人が増えたり,脳の働きが弱ったりする人も増加しているようです。このような要因により,世の中の人々は「脳を使わない方向」にシフトしているようですが,健康的な生活を送り,長生きするためには,手足を使い,見て,話して,食べて,嗅いでなど,五感をフルに活動させることが大切なようです。私はこの本を読んで,スマホやタブレットへの依存を減らし,脳をもっと活性化させる習慣を強めなければと感じました。