第429回 トンネルの掘り進め方

車で新しく出来た高速道路を走っていると,トンネルの多さとその長さに驚きます。さて,日本で一番長い道路トンネルはどこにあり,その長さはどれくらいでしょうか。

私はそれは長野県あたりの山の中にあると思っていましたが,その答えは意外なところでした。

それは東京都にある「山手トンネル」で,その長さは全長18.2km。世界で2番目の長さです。ちなみに,日本で一番長い鉄道トンネルは,青森県と北海道を結ぶ「青函トンネル」で,全長は53.85km,こちらも世界で2番目の長さです。

ところで,それらのトンネルはどのようにして掘られていくのでしょうか。それは「シールド」と呼ばれる筒で,切羽(きりは)後方のトンネル壁面を一時的に支えながら,扇風機のような形をした切羽で,岩や土を削り取りながら進むという原理です。この方法はシールド工法と呼ばれますが,一番のポイントは削りながら前進する際にできた穴を,崩さないようにするために,それをいかに支えていくかにあります。この工法を思いついたのは,イギリスの造船所で働いていた,ブルネルという技師で,それは1818年のことです。この工法を開発するヒントになったのは,水中の木質に穴を開けてしまうフナクイムシだそうです。フナクイムシは水中の木材に穴を開け,トンネルを作ってしまうという厄介な虫です。この虫のすごいところは,かじって開けた穴が水圧で塞がれてしまうことを防ぐための技をもっていることです。その秘密は,穴が水圧でつぶれないように,体から石灰質の液を出し,それを穴の壁面に塗り付けながら穴を掘り進めるという驚くべき特技です。

シールド工法も,この技を応用しています。つまり,少し掘り進めるごとに,コンクリート製のブロックを円筒形に組み込んで,掘り進めた穴を固定していくのです。

こんなことを知ると,改めて大自然の知恵の素晴らしさに感嘆します。