第418回 良かった探し

ずいぶん古い話になりますが,1986年に「愛少女ポリアンナ物語」というアニメが,毎週テレビで放映され人気を博していました。この物語では,少女ポリアンナが父を亡くして孤児となり,辛い目にあったり,叔母のひどい仕打ちに涙したりしながらも,明るく元気に生き抜いていく有様が描かれていました。
その時にカギとなる言葉が,牧師であった父の遺言である「良かった探し」です。良かった探しとは,どんなに辛い目にあっても,ゲームのようにしてその中から「良かったこと」「プラスなこと」を探し続け,それを楽しむというものです。このアニメが放映された頃には,私の子どもたちはまだ小学生でしたが,この「良かった探し」は当時の子どもたちにも大きな影響を与えました。

どんな生物でも自分の命を守るために,脳は「ネガティブ思考」になっているようです。つまり,絶えず悪い方に,悪い方にと考えてしまう思考法です。生徒や子どもなどに対して,良いところよりも悪いところが目につき,それをすぐに指摘したくなるというのも,その一例です。人の欠点は修行や努力や勉強などしなくても容易に見えます。つまり,人の悪いところばかり目が行くのは,まだまだ未熟な人間だということになります。一方,「人の良いところ」は大脳新皮質の脳で感じるものなので,人間性を磨く修行をしないうちは見えてきません。

このように考えていくと,私たちは日々「良かった探し」を意識して生きることが大切であると考えられます。このアニメがヒットしたのは,毎回のストーリーが人間の本質を突き,人として生きるべき指針を示していたからかもしれません。