第389回 小学校英語の課題

2023年1月31日の日経新聞には,「小学校英語の課題」とうタイトルで神田外語大学教授の田中真紀子氏の論文が掲載されています。
※その論文の要旨は次の通りです。
(1)(日本語の習得過程を考えてもわかるように)言語の習得の順番は「聞く→話す→読む→書く」である。
(2)小学校英語では「英語が使える日本人」を目標としており,「聞く→話す」については問題ない。
(3)ここで注意が必要なのは「『読む』という技能は聞いたり話したりしているだけでは,決して習得できない」ということだ。
(4)そのために「読む」という技能を学校教育の中で丁寧に教える必要がある。そして,そのためには,フォニックス(文字と音の関係を理解させる指導)に時間をかけるべきで,これが欠けてしまった生徒は英語が読めず,その後の英語学習につまづいてしまう。
※以上のことから田中氏は,英語が読めない児童は,英語の音を表す文字が書けず,その結果,英語を書く技能も身につかないと述べておられます。

また,論文には次のような文章も掲載されています。「文科省が2012年に実施した調査では,英語を勉強した中学1年生の約8割が,小学校で英単語や文を読んだり書いたりすることをもっとしておきたかったと答えている。読み書きは中学校の英語に直結する技能であり,小中の円滑な接続のカギだ」と。

以上の見解について,皆様のご意見はいかがでしょうか。

手前味噌になりますが,私共もこの意見に大賛成で,この度の『中学英語へのかけ橋』という教材も「中学入学までに基本的な読み書きと英文法を習得しておいた方が,中学英語にスムーズに入っていける」との考えから出版したものです。

また,教材展示会などで色々な先生とお話していると,英語力を飛躍的に伸ばし,英検などで目覚ましい成果を上げている方に出会います。その先生方の中には,次のような指導法をとられている方が多くおられます。
(1)小学5年生のうちに小社刊『アルファベットの名人』などでフォニックス(英単語の読み方)を徹底的にマスターさせてしまう。
(2)小学6年生からは小社刊『ステップ式英語1』などで英単語や文章を書くことに慣れさせ,英文法の基礎を固めてしまう。
※以上の指導を確立させておけば,中学に入っても一般の生徒に比べ,英語力を持つ生徒を輩出できるようです。

ただし,ここでの大切なポイントがあります。

それらの塾では,その方針を保護者に啓蒙し,理解して頂き,決して小学校英語の補習的なことは行わず,塾独自の方針を貫き通しているということです。始めのうちは,「その方針を通すのは地方では難しい」「『塾に通うのは,中学に入ってからでも遅くない』という保護者ばかりなので,小学生が集まらない」などという現状もあったようです。しかし,そこで踏ん張り,そのような風潮を突破していくことが,迫りくる少子化の難局を乗り切っていく切り札になるのかもしれません。