第388回 これからの教育の姿
2023年1月16日付の日経新聞一面のトップ記事のタイトルは「先生の質 保てない」というものでした。
戦後、日本の教育は課題を抱えながらも、その指導水準の高さで海外から評価されてきました。その原動力となったのが良質な人材が揃った教員集団でした。しかし、今その世界に異変が起きているようです。その一つは教員不足です。文科省の調査ではそれに該当する学校は1591校・計2065人となり、共に1年で3割増えています。
この背景には教職の魅力低下による志願者の深刻な減少があげられます。21年度実施の小学校の採用試験受験者は約4万人で、これは10年前より3割の減少です。その結果、採用倍率は4.4倍から過去最低の2.5倍になりました。この中には力不足の志願者も多く、倍率に比例して教員の質も下がり、「新人が授業も学級運営も満足にできない」という事態も起きているようです。
また河合雅司著『未来の年表』〈講談社現代新書〉によれば、全国的には、出生数が減っている地区を中心に小中学校の統合が進んでいるとのことです。文科省の発表によれば、全国の小学校数は2009年度の3万2018校から、2019年度は2万803校へと1割ほど減っています。
また、2020年の全国の出生数を見てみると、出生数が最多なのは東京の約10万人、最小なのが鳥取県の約4千人で、今や新生児の約8人に1人は「東京都生まれ」となります。この傾向が進むと、出生数の偏在が進み、地方都市でも県庁所在地以外など人口が少ない地域での出生はますます減少の一途をたどることになるでしょう。それによって影響を受けるのは子どもたちです。今後地方によってはスクールバスを利用して通学距離20km以上の地域から通学する児童なども増加することでしょう。自宅から学校までこれだけ離れてしまうと、低学年の子どもなどへの精神的負担も増すことでしょう。
このような社会の変化に対し、これからの塾はどう対応していけばよいのでしょうか。学校教育の質の低下によって塾での指導がますます価値を帯びたものになるのかもしれません。また、通学の困難さから不登校の生徒も増え、オンライン授業を求めるニーズが高まるかもしれません。前述の書籍なども参考にしながら、「これからの日本の姿」を考えていくことも大切であると感じました。