第390回 後始末

私は後始末があまり得意ではありません。なぜかというと,せっかちな性格のため,先へ先へと気が行ってしまうからです。しかし,その性格が裏目に出てしまうこともよくあります。例えば,後始末をきっちりとやらないと,定位置にあるべきものがそこになく,探さねばならないような場合です。そのようなことをすると,その時間が人生で最も無駄な時間となってしまいます。後始末には色々な形があります。
・席をたったら椅子を入れる。
・靴を脱いだら揃える。または靴箱に入れる。
・使った傘は雫を落としてから所定の場所に戻す。
→これらは基本中の基本でしょう。

少し高度な後始末としては,次のようなものがあります。

私は時々教材の展示会でビジネスホテルに泊まることがあります。以前はホテルを出るときには,使った寝間着やスリッパ,タオルなどは無造作に至る所に置きっぱなしにしていました。ところがある時,何かの本で「一流の人かそうでない人かは,ホテルに泊まった後の部屋の様子を見ればわかる」という文章に出会いました。

言われてみれば確かにその通りで,もし私がホテルの清掃員だったとしたら,これから清掃すべき部屋に入った瞬間「その人の魂のグレード」のようなものを感じ取ることでしょう。また,出張が終わってホテルに入り,会社への報告書を書くというような場面についても,その人のグレードが現れます。一日中立ち詰めの仕事で疲れ切っているにもかかわらず,その日のうちに克明な報告をメールする人もいることでしょう。むしろこのようなところにこそ,その人の人格のレベルが表れるような気がします。

また,別の例として,(私自身はかなりいい加減なところがあり,なかなかできませんが)時々次のような場面に出会い,大いに感動することがあります。それは何か人にプレゼントしたときなどのことです。ある人は何日か後に必ず「頂いた○○,ありがとうございました。家族みんなでゆっくり頂こうと思いましたが,あっという間に子ども達に先に食べられてしまい,私の取り分はごくわずかでした。しかしそれはとても美味しかったです。」などのようなお礼のメールを必ず下さいます。このような方に出会うと,ついつい「次の機会があったら,また何かプレゼントしてさしあげよう」という気分になります。

このような返事を一つ一つ丁寧にすることも,後始末の一つなのでしょう。後始末は気を抜くをつい忘れたり,億劫になって省いてしまうものです。また,後始末をきっちりとするということは,前回ご紹介した「丁寧道」にも繋がるように思います。これを書いていて,今年の私のテーマは「後始末」と「丁寧道」にしようと決意しました。