第377回 長生きの秘訣

皆様は大正11年(1922年)生まれで,2019年現在97歳の鮫島純子さんをご存知ですか。鮫島さんの祖父は日本の資本主義の礎を築いた渋沢栄一氏で,父は栄一の三男で実業家の渋沢正雄氏です。鮫島さんは20歳で岩倉具視の曾孫に当たる鮫島氏と結婚しました。そして渋沢栄一の精神を受け継ぎ,結婚後も質素倹約の暮らし方を実践しました。

鮫島さんは,独自の健康法を長年実践し,病気知らずの若々しい美しさでも注目されています。実生活においても,70代で水泳,80代で社交ダンス,90代でヨガを始めるなど,充実した人生を送ることに積極的に取り組んでいます。さらに,鮫島さんの素晴らしいところは,「心の持ち方」です。鮫島さんは講演の後などで,次のような質問をよく受けるそうです。それは「いつまでも元気で若々しく,イキイキと生きる秘訣は何ですか?」というものです。そんなときは,「すべてに感謝して生きる心が大事と思い,『ありがとう』という言葉をなるべく口に出すよう心がけております」と答えるそうです。確かに,自分の肉体は神様(サムシング・グレイト)から期間限定でお借りしているものとも考えられますから,日々「息ができること,食事ができること,つつがなく排泄できること」にも感謝すべきでしょう。

鮫島さんは「魂は何度も生まれ変わり,今生きている人生だけではない。魂は永遠に生き続け,学びながら浄化成長していく」と信じておられるようです。そう考えると,受け入れがたい辛い出来事も,不安や恐れも,自分の心の浄化成長のために,自分の魂が選んだ経験だったと考えられるそうです。

そして,それらの問題を乗り越えることで,また少し成長できたと喜べるようになるとのことです。

このような考えを聞くと,生きていく意味も分かり,毎日充実して過ごせるように感じます。鮫島さんは東日本大震災の一週間前のときに、振り込め詐欺にあってしまい,家の改築資金にと長年倹約を重ねて貯めてきた数百万円を,巧妙な語り口に騙されて,失ってしまったそうです。

詐欺にあったと気づき,すぐに警察署に届け出ましたが,このときの鮫島さんの心情は,「犯人が憎い,悔しいという思いよりも,こんな風に人を騙して大金を奪う犯人の,暗転するであろうこの先の人生や,親御さんの気持ちに心を痛める」というものだったそうです。そのような心情を警察官に話したところ,「詐欺にあって犯人の人生を心配する被害者なんて初めてですよ」と呆れられたそうです。

なお,これらの話は『97歳,幸せな超ポジティブ生活』鮫島純子著〈三笠書房〉に収録されています。ご興味のある方は,ぜひご一読下さい。