第378回 マスクは有効?
日本では「いつでもどこでもマスク着用」は当たり前のようになっていますが,マスクの着用は本当に有効なのでしょうか。むしろマスクの着用にはデメリットがあります。酸素の摂取量が減る一方で,呼気の二酸化炭素濃度が高まります。そのため,血管が拡張して「マスク頭痛」を引き起こす可能性があります。またマスクの着用で口の周りが蒸れて,雑菌が繁殖しやすくなり,ニキビや肌荒れなどの皮膚のトラブルも増えています。その他,口腔内が乾燥して歯周病や虫歯になりやすくなったり,口臭も強くなりがちと,いろいろな危険性があります。
コロナのパンデミックが始まった当初,WHOは「健康な人がマスクを着用していても,コロナの感染を予防できる根拠はない」としていました。ところが2020年6月にWHOが急に方針を転換し「感染が広がっている地域の公共の場でのマスクの着用を推奨する」と発表しました。その途端,日本の感染症専門医たちもこぞって「いつでもどこでもマスク着用」を求め始めました。
しかし現在では,デンマークでのマスク着用者と非着用者の感染予防効果を比べるランダム化比較試験などからも明らかになっているように,「マスクの感染予防効果は認められない」というのが世界全体の見解になっています。
そのような背景からヨーロッパ諸国でも2022年春頃から,マスクの着用義務が解除され,海外の航空各社も機内でのマスク着用義務が解除されています。翻って日本はどうでしょうか。コロナは空気感染のため,マスクをしていても呼吸のたびに隙間からウイルスが出入りするため,マスクにこだわる根拠はありません。それなのになぜいろいろな場所でマスクの着用が求められるのでしょうか。
私は特に子どものマスクの着用について,いろいろな不安を感じています。まずは,呼吸がしにくく息が浅くなるために,体の健康や成長に支障が出ないかということです。次には精神の発達における問題です。マスクで顔の下半分を覆ってしまうと,「表情を読めない子どもたち」を生み出してしまう恐れがあります。実際に保育園などで子どもと接している先生方からは,「子どもたちに笑顔を向けても反応が薄い」「子どもたちに思いが伝わっていないように感じる」といった声が上がっているようです。
先生がマスクをしていると,子どもたちにとっては大人が想像する以上に相手の表情を読み取るのが難しくなるようです。また,自分が笑ったときにも,先生が笑い返してくれているかどうかもわかりません。大人はすでに完成した脳をもっているので,このようなことに対する心配はあまりありませんが,精神の発達途上にある子どもたちのマスクの着用は,長いスパンで考えると,とてつもなく深刻な問題を抱えているのかもしれません。
私がこのような現状や問題点を知ったのは,京都大学大学院教育学研究科教授である明和(みょうわ)政子先生が書いた『マスク社会が危ない』〈宝島社新書〉という本を読んだからです。子どもの教育などにかかわりのある方は,ぜひご一読をお勧めします。