第360回 赤ちゃんの不思議(続編)

私には「植物」を通じて知り合いになった医師の友達がいます。彼に前回の「赤ちゃんの心臓」についてのメールを読んでもらいました。すると,それについてさらに詳しい情報を教えてくれました。

彼が医学生の頃,ある有名な小児科の教授からいろいろな教えを頂いていたそうです。その中に,やはり「赤ちゃんの心臓の不思議」についての話があり,いつも学生たちに熱く語っていたそうです。それは次のような内容です。

赤ちゃんはお母さんのお腹の中にいるときは水の中の生き物です。その生き物が産道を通って空気の中に出てくるわけです。そのストレスたるや,大人なら死んでしまうくらい凄いものだそうです。確かに水の中にいるときの肺は縮んで水浸しになっています。その肺が産道を出るとともに,一気に広がって膨らむのです。

その気圧の差と,ショック状態のとき,ステロイドというホルモンが分泌されます。その刺激で心臓に開いていた穴が一気に塞がるのだそうです。

私はその話をきいて,大気圏外から地球に戻る宇宙船の中にいる宇宙飛行士をイメージしました。

宇宙船に乗った宇宙飛行士は地球の強烈な引力と摩擦熱によって,火の玉のようになった宇宙船の中で戦いながら地球に着陸し,生還します。赤ちゃんも生命を受け,水の中で10か月程過ごした後,次は空気のある世界の中で生き抜こうと必死になって戦い,産まれ出てきます。「おぎゃー,おぎゃー!」という産声は,「空気のある世界の中で生きる」ということに成功した雄叫びなのでしょう。私たちはそこまで大変な思いをして生まれてきたのですね。その授かった命は粗末にせず,世のため人のために大切に使うべきなのだろうとしみじみと思いました。