第357回 初耳の情報に出会ったら「ソ・ウ・カ・ナ」と言ってみる

「インターネットには気を付けよう」とか,「情報が正しいか,真偽を見極めよう」とか,よく言われます。しかし,それが初耳の情報なら,真偽のほどは判断できません。そこで大切なことが,そのような場合には「ソ・ウ・カ・ナ」と言ってみるのが良いようです。まず「ソ」について。これは初めて聞く情報に出会ったら,「まだわからないよね?」と捉え,結論を即断(ソ)しないことのようです。世の中では即断しないと,「優柔不断だ」と言われることもありますが,「決めつけない自分は柔軟だ」と捉えるといいようです。このような態度は電話による「オレオレ詐欺」のような場合にも役立つことでしょう。

次の「ウ」は「鵜吞みにするな」です。大概の情報は,発信者の持っている意見や印象が,事実の部分と一緒になって届きます。例えば,「疑惑の渦中にあるA氏は,硬い表情で記者を避けるように,自宅からコソコソと出ていきました」という報道に接したとします。するとそれを聞いた人は「やはりA氏は怪しい」と捉えがちです。しかし,この報道が伝えていることは,「A氏は家から出ていった」ということだけです。このようなことはよくあることで,その報道をそのまま鵜吞みにすることは危険だとわかります。

次の「カ」は,「隠れているものはないか」です。別の言い方をすれば,「立場,重心,角度などをカエル」ことです。例えば,「いじめの相談が去年より増えた」という情報があったとします。これは良い話でしょうか,それとも悪い話でしょうか。「相談が増えたということは,泣き寝入りが減ったということだから,良い話である」と捉えることもできます。一方「いじめが増えているから相談が増えたわけだから,悪い話である」ともいえます。

このように,重心や角度を変えてみると,「まだわからないよね」と捉えることができ,即断することを防げます。

最後の「ナ」は「中だけ見るな」です。これは「隠れているものはないかな?」と見る姿勢です。世間で何かが話題になったとします。それをインターネットで調べるとき,上位三つを選ぶのは危険なようです。上から三つを選んでも,それは同じような意見ばかりかもしれません。それよりもちょっと毛色の変わったものを選び,それぞれの中味を検討するのがいいようです。

そうすれば,インターネットは自分の思い込みを固める道具から,自分の思い込みを壊す道具に変えることができます。私はこれらのテクニックを日本講演新聞の講演ダイジェスト文から知ることができました。その講話者は白鴎大学特任教授の下村健一氏です。氏はTBSの報道アナウンサーとして活躍した後フリーになり,取材キャスターを続ける一方,市民メディアアドバイザーとしても活動されています。なお,氏のエッセイ『想像力のスイッチを入れよう』は,光村図書出版の5年の国語の教科書にも収められています。