第358回 夢を叶える
私は今から約60年前,中学1年生になりたての頃の社会科の授業を時々思い出すことがあります。
急に話が変わりますが,皆さんはこの山をご存知ですか。
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この山は鹿児島県指宿市の近くで,海辺からすっくとそびえ立つ「開聞岳」です。
この山は,別名薩摩富士とも呼ばれ,薩摩半島の最南端に位置し,標高は924mです。冒頭の文にある,中1のときの社会科の授業は,この山を縮小した模型を作ることから始まりました。私はその当時,「日本には富士山に似た,こんな美しい山があるのだ。ぜひ一度見たいものだ」と子供心に想っていました。
そして,それから40年後。母親を連れて九州に旅行する機会がありました。そのとき,鹿児島の指宿にも立ち寄り,有名な砂風呂にも入ったり,温泉や料理を楽しんだりしました。そのとき,この開聞岳を見て,その姿の美しさに感動するとともに,中1のときの社会科の授業のことを思い返しました。40年前の夢が叶ったのです。そしてそのとき,「次は,この山に登ろう」と決意しました。
それから20年が経ちました。ついに開聞岳登頂のチャンスが巡ってきました。私の大学時代の友人で,ヒマラヤに3回も登山に行った経験をもつ方から,開聞岳登山のお誘いを受けたのです。彼は現在,日本百名山踏破に挑戦中で,西日本にある百名山については,私も同行を許されていました。
開聞岳は標高こそ924mと低い山のように思われますが,海面から登るような登山のため,かなりの高低差があります。しかも,山頂付近は梯子やロープを伝い,両手・両足を使って這い上るような難所があります。
登り始めて5時間が経ち,ようやく登頂を果たしました。眼下には海が広がり,それはそれは美しい光景でした。
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そして,60年前の想いがこうして実を結んだことに感動を覚えました。「強くその実現を願い続けること」は大切なことのようです。