第351回 効果を上げるこれからの英語の指導法
2021年度からの中学生の英語の教科書が大変難しくなり,どう指導したらいいのかと,困っている学校や塾の先生が多くおられるのではないかと思います。例えば,中1の英語の教科書を見て,私が一番疑問に思うことは,この教科書では「ステップを踏んだ指導法というのはどこに行ってしまったのか」ということです。
例えば算数で言えば,まず「整数の四則計算」を学んでから,次に小数や分数の計算を学ぶというように,ステップを踏んで学習が進むように体系化されています。私は英語においてもそのような学習法が適切であると思っています。ところが,今の英語の教科書では,そのようなステップは無視されているようです。例えば,ある教科書では,Lesson1の一番初めのところで,I like animals very much. I have a turtle and an iguana at home.という文章が登場します。このとき,文型や文法はさておくとして,生徒の中には,「なぜanimalsとsがつくのか。」「turtleにはaがつき,iguanaにはanがついているのはなぜか。」などと疑問をもつ人が出てくることでしょう。これらの点について,教科書には何の説明もないようです。私が古い人間だからなのかもしれませんが,英語学習の順序として,まず,数えられる名詞と数えられない名詞の違いや,a, an, theなどの冠詞については,早い段階で指導しておくべきだと思っています。なぜなら,日本語と違い『英語は数にうるさい言葉である』ということを生徒の頭に染み込ませておかないと,いつまでたっても「正しい英文」を書くことができないからです。
英語学習においては,リスニングやスピーキングも大切ですが,最終的に英語力を試されるのは「英作文」です。そしてそれを裏付けるかのように,入試でも英作文の出題比率が高まっています。また,英語を学んだ生徒たちが将来的に英米人との片言英語を楽しむ程度の関わり合いをもつだけなら,ブロークン英語の修得だけでも事足りることでしょう。しかし,将来ビジネス上での商談や,学術研究の論文発表などのシーンでも英語を使いたいという人においては,冠詞の使い方や三単元のsなども正確に使いこなせる英語力が求められます。そのためには,片言英語ではなく,自分でしっかりと正確な英文を作れる能力を獲得しておくことが求められます。
以上のようなことを考慮すると,私は自塾の塾生が,「中学生になるまでに,学校で学ぶ小学校英語とは別に,正確な英作文を作れるような骨太な文法力を塾独自に身につけさせておくことが大切ではないか」と考えています。そのためには小6の秋から中1の春までに,「中学入学準備講座」を開催して,くどいくらいの反復トレーニングを通じて英語の土台を固めさせておくことが必至であると確信します。そして,そのコースを確立できた塾さんは,高校入試に向けての生徒の英語力アップが実現でき,保護者からの高い評価も勝ち取れると思います。
ここからは少し宣伝となり恐縮ですが,今しばらくお付き合い下さい。以上述べたような背景と観点から,当社では現在,『中学英語へのかけ橋(仮題)』という英文法のトレーニング教材を開発中で,今年の11月位から発売する予定です。そのテキストでは,アルファベットから始まり,名詞,名詞を飾る冠詞,定冠詞,名詞を修飾する形容詞という具合に,ステップ式に英語の土台をマスターさせるように編集されています。そしてそれに続き,be動詞,一般動詞について,くどいくらいにトレーニングさせ,さらにそれらのシャッフル問題もふんだんにページが割かれています。その結果,中学生になるまでに,この一冊をやり遂げておけば,中学生からの英語学習がとても楽になるように編集されています。
さて,余談になりますが,前述した英語の教科書では,practice volleyballとplay the pianoが同時に出ています。しかし,なぜvolleyballにはtheがつかず,pianoにはtheがつくのか,その説明は見当たりません。
一方,私共のこのテキストでは,その訳もしっかり書かれています。そして,それを読んだ生徒は「なるほど,そういう訳なのか。それでやっとtheという言葉の意味がわかった」と納得できます。そしてその後は,英作文の中で正しくtheという言葉を使いこなせることでしょう。