第332回 「おかみさん」という言葉の由来

最近,私は『日本のこころの教育』境野勝悟(かつのり)著〈致知出版社〉という本を読みました。
この本は氏が私立花巻東高校で講演した時の講演録を文章化したものです。
この時,氏は2時間にわたって熱弁をふるい,全校生徒七百人の高校生が声ひとつ立てず聞き入りました。

この講演の内容は大変示唆に富み,私も知らないことが多く,日本という国の素晴らしさを再認識させられました。
氏はその講演の中で,「太陽が日本人の心の原点である」と述べています。

さて,落語などを聞いていると,「おかみさん」とか「うちのカカア」「うちのカカさま」などという言葉をよく耳にします。
また,今でも歌舞伎では母親と父親について,「カカさまとトトさまが…」と言います。
これらの単語に含まれる「カ」という言葉は古くは「カカ」さらに「カアカア」,「カッカッ」と言ったそうです。
そしてその「カ」は「太陽」を意味し,さらに「カミ」は「日・身(かみ)」で「太陽の身体」を表した言葉だそうです。

お母さんはいつも明るく,あたたかでわたくしたちの生命を育んでくれます。
母親は,わたくしたちを産み,育ててくれる太陽さんそのもののようです。
これらのことから,母親のことを「お日身(かみ)さん」と言うようになりました。
このように日本人は太陽を大切にし,母親を太陽のように尊重してきました。

では,なぜ父親のことを「おとうさん」と言うのでしょうか。

夫は母親や子どものために一生懸命外へ出て働いて,毎日毎日の生活の糧を運んでくれます。
女性たちはそのような夫を「尊(とうと)い人」と尊敬し,そのような由来からお父さんのことを「とうと」→「おとうさん」と言うようになったそうです。
父親のことを「パパ」,母親のことを「ママ」と呼び合う家庭もありますが,以上のような言葉の由来を知ると,「おとうさん」「おかあさん」「オトン」「オカン」などと呼び合う方が,ちょっぴり味わい深いようです。