第331回 すべての人に英会話を

2021年10月11日の日経新聞の夕刊に,東洋学園大学教授 大西泰斗(ひろと)氏の「すべての人に英会話を」という文章が載っていました。
氏はNHK「ラジオ英会話」も担当する人気講師です。
氏は英会話を学ぶのには,「まず文法から」と主張しています。
ただし,その文法とは伝統的な学校文法とは少し異なります。

従来の英文法は「英文を訳読すること」を目標としてきました。
一方,氏が主張する英文法は,(私共も従来から提唱してきた)「英文は同時通訳の人が行っているように,前から理解していく」というフレーズ・リーディング的な手法です。
さらに氏は,「話すための文法の核は語順である」と述べています。
これについても私共も大賛成で,当社の「スーパー英語」でも「ステップ式英語」でも,あえて「英語の語順トレーニング」のページを,テキストの始めの部分に導入しています。

私は英文をスラスラと書いたり話したりするために一番大切なことは,「英語を学ぶときは日本語脳を捨て,英語脳に切り替えること」だと思っています。
例えば,「僕は/マリコに/祇園にある/あるレストランで/会った」という日本語を英語に直すとします。
もし,話し手が日本語脳のままなら,”I Mariko in Gion at a restaurant met.”のような英語になってしまいます。

この時,もし話し手が日本語脳から英語脳に切り替えることができれば,「僕は/会ったよ/マリコに/あるレストランで/祇園にある」という感じの文章が浮かび,”I met Mariko at a restaurant in Gion.”と正しい英文を作ることができます。
つまり,日本語の語順は,「周りの方から話し始めて,だんだんと中心に向かっていく」ような感じです。
一方,英語は,「まず大切なことを先に述べて,次にだんだんと周りに広げながらそれを説明していく」ような感じです。
したがって,先程の文章で言えば,「僕は→(どうしたの?)→会ったよ→(誰と?)→マリコに→(どこで?)→あるレストランで→(どこにある?)→祇園にある。」という感じです。

私は,このような感覚を掴まないままに英語を学んでいっても,いつまでたっても英語をマスターすることはできないのではないかと感じます。
今年から中学校の英語の教科書が格段に難しくなりました。
その教科書をマスターするには,小学生のうちに「ステップ式英語1」などをやり遂げ,基本文法をマスターしてしまうこととともに,「英語を学ぶときは英語脳になりきる」ことが大切なように思います。
そして,英語を学ぶことは,日本語とは異質な発想法を学ぶことができ,学習者の世界を広げることにも繋がるように感じます。