第321回 アート思考

私は先日「13歳からのアート思考」末永幸歩著〈ダイヤモンド社〉という本を読みました。
著者は美術の先生で,ユニークな授業で生徒の人気を集めています。
今まで私は,美術については強い興味もなく,美術の本質についてもわかりませんでした。
しかし,この本を読んで,「アートとは,そういうものだったのか」と深く理解することができました。

それと同時に,常識にとらわれることのない新しい思考法を手に入れることができました。
この本は2020年2月の発刊ですが,すでに「9刷」もされている密かなベストセラーであることも「なるほど」と理解することができました。
この本の初めの部分は「?」という感じですが,読み進むにつれぐいぐいと引き込まれていきます。

さて,みなさんにとって「上手な絵」とはどんな絵を指しますか。
昔の多くの画家は「より正確で本物に近い絵」,つまり「リアルな絵」を追求してきました。
しかし,「カメラ」が広まると,それに打ち勝とうとすることが無意味になりました。

それは,カメラの登場により,「目に映る通りに世界を描く」というルネサンス以降のゴールが崩れてしまったからです。
そのゴールを目指した画家のことを著者は「花職人」と名付けています。
そして,その壁を突破した絵がアンリ・マティスの「緑のすじのあるマティス夫人の肖像」です。

詳しくは本書に譲りますが,この本は単なる「美術史」を語るものではなく,「アートとは何か」「アート思考で生きるとは,どんな生き方なのか」まで追求しています。
この本を読んで私は,「アートの本質をつかめた」と感じられたと同時に,自分の生き方についても,より強い自信を持つことができました。