第314回 私たちにできるお布施

私は先日、日本講演新聞で福聚山慈眼寺住職、塩沼亮潤(りょじゅん)氏の講演ダイジェスト文を読みました。
氏は往復48kmの山道を9年の歳月をかけて、合計千日間歩き続ける修行「大峯千日回峰行」を成し遂げられました。

その修行は、おにぎり2個だけをもち、深夜に1日で48kmも歩き続けるというものですから、正に命懸けとも言えます。
この行の中盤では、血尿が出たりするなど、生命の境をさまようことも多くあったそうです。
しかし、それを途中で止めることはできません。
止めるとしたら、持参した小刀で自死しなければならないからです。

行の終盤にさしかかると、氏の心の中にだんだん感謝の気持ちが表れるようになりました。
この千日回峰行をやり遂げたとき、氏は「呼吸ができるだけでも幸せ」「夜、眠れるだけでも幸せ」というような、「小さな幸せが本当の幸せ」だということに気付きました。

また、膝を突き合わせた人と人が心を通い合わせ、笑顔で相手を思いやる。
それが一番の幸せとのことです。
「布施」という言葉があります。
これは人に施すという意味ですが、たとえお金や物がなくてもできる布施があるそうです。
それは次の2つです。
1つは「愛語施」といい、人に優しい言葉をかけてあげることです。

もう1つは「和顔施」といい、人に優しい笑顔で接することです。
優しい笑顔や言葉をかけられた人は、心が潤い、それが生きる光となります。
この「愛語施」や「和顔施」が地域や国、やがては世界の幸せに繋がります。
一人一人が心がければ、誰でもできるこの「布施」が世界中に広がれば、と思います。
そして、まずは自分から始めたいものです。