第276回 やまとことば

最近私は、(一社)やまとの智恵実践協会代表理事である、辻中 公(きみ)氏の講演ダイジェスト文を読みました。

日本語には、外国語には訳し難い「行ってらっしゃい」とか「ただいま」などの言葉があります。それらの言葉には、どんな意味が秘められているのでしょうか。

「行ってきます」→「行ってらっしゃい」,「ただいま」→「おかえり」は循環を表している言葉だそうです。「行ってらっしゃい」は、「行ったら必ず帰っていらっしゃい」という祈りの言葉であり、「見送る挨拶」というよりも、相手の無事を祈る気持ちが言葉になったものだそうです。そして「行ってきます」は、「行ったら必ず帰ってきます」という約束をする言葉です。

「ただいま」はどうでしょうか。「ただいま」の意味は、もちろん「ただ今ここに戻ってきました」という意味です。そして、「おかえり」は「よく帰ってきたね。よかった、よかった」という意味が込められています。さらに「ただいま」には、別の意味も含まれているようです。それは、玄関に入って「ただいま」と言うと、その瞬間、外で付けてきた「穢(けが)れ」をポーンと払い落とせるそうです。つまり、「ただいま」という言葉は穢れを落とす呪文の意味合いも持つようです。だから、帰っても家に誰も居ないとわかっていても、玄関に入ったら大きな声で「ただいま」と言うと良いそうです。

このように、私達が何気なく使っている言葉の中には、千年以上も前から使われてきた「やまとことば」がたくさん残っています。そういう言葉には、呪文,祈り,おまじないの意味が含まれているので、英語には訳せないというわけです。

最近、若者同士では「あざっす」などの言葉が使われています。「やまとことば」は神様が日本人に与えて下さった、自分の身を守る祝詞(のりと)みたいなものだそうです。そのようなことから考えれば、「あざっす」ではなく、相手に対し丁寧に「ありがとうございます」と伝えた方が良いのかも知れません。