第261回 書く力をつける
私は今、コピーライターである梅田悟司氏が書かれた『気持ちを言葉にできる魔法のノート』〈日本経済新聞出版者〉を読んでいます。この本を読もうと思ったきっかけは、先日、『作文・小論文の名人』というテキストを出版したこともあり、「上手に文を書くことの本質は何か」ということを突き詰めたい、との想いからです。
この本を読んでいて新鮮に感じたことは、「言葉には『内なる言葉』と『外に向かう言葉』がある」ということです。文を書く上で大切なことは、自分の中から『内なる言葉』をたくさん引き出すことのようです。
詳しくは本書に譲りますが、例えば「将来なりたい職業」という題に対し、「医者になる」というテーマで作文を書くとします。そのとき大切なことは、まず『内なる言葉』を使って、「私はなぜ医者になりたいと思っているのだろうか」とか、「医者になって何をしたいと思うのか」などと、自分に問いかけることのようです。次に、それらを相手に通じるように整理して、まとめます。最後に、それを『外なる言葉』で表現すれば「できあがり」とのことです。
この一連の流れの中で最も大切なことは、「『内なる言葉』で自分自身に質問し、それに答えていくことのようです。それが即ち、「考える」ということになるのかもしれません。「最近の子ども達は考えることをしない」などという声も聞かれます。大人も子どももスマホなどに振り回されて、『内なる言葉』と向き合う時間が昔より減っていることも、その一因としてあるのでしょうか。
と、ここまで文章を書いてきて、「やはり!」と感じました。ここまで書くのに30分ほどを要していますが、これまでの私の頭の中は「どうしたら読み手にわかりやすく、本のエッセンスを伝えられるだろうか」とか、「『内なる言葉』の本質は何なのだろうか」とかの質問に答えること、つまり「考える」ことで一杯でした。
他の生物と違って、人間だけが「考える」ことができる動物です。私としては、ますます「考える」ことを習慣とし、より自分を深めていきたいと思います。