第241回 『ケーキの切れない非行少年たち』

私はタイトルに惹かれて、表題の本を読みました。著者は児童精神科医である宮口幸治氏で、精神科病院や医療少年院に勤務されている方です。

皆さんが塾生に「丸いケーキを三等分するにはどう切ればいい?」と質問したとしたら、塾生は何と答えるでしょうか。少しでも分数を学んだ生徒なら、少し考えただけで、ベンツのマークのような切り方を思い浮かべることでしょう。

しかし、多くの非行少年たちはそれがわからず、円に二本の平行線を引くような切り方を答えにするそうです。詳しくは本書に譲りますが、非行を犯す子どもたちは「性根が悪い」とかではなく、「認知機能」が弱く、「そのような行動をしたら、その後どういうことになるか」などについて、考える力が劣っているそうです。

「認知機能が弱い」ということに関しては、入塾の相談に来る生徒さんの中に、次のような傾向をもつ生徒さんがおられませんか。
1.漢字や計算がなかなか覚えられず、覚えてもすぐに忘れてしまう。
2.計算において、繰り上がりができない。
3.黒板に書いてある事柄を写せない。
4.文字をひとかたまりとして読めない。

このような傾向をもつ生徒への指導としては、普通の学校の勉強を教えることでは対応できないようです。それよりも、「点つなぎ」のような「認知機能強化トレーニング」が効果的なようです。ちょうど当社の教材の中に、『あたまの準備運動』というものがありますが、そのようなトレーニングが必要なようです。

最近、「なぜそんな事件を起こすのか。相手の立場に立って考えることはできないのか。」などと疑問に思う事件が多発しています。この本を読むと、その問題の解決には、「その子にふさわしい教育の必要性」があることがわかります。