第25回  突っ込みが許されない「危うい社会」

大阪大学大学院 人間科学研究科教授 小野田正利さんが書かれた文を読みました。今の世の中は満足基準とか期待水準が一昔前よりぐっと上がった時代になっているそうです。

例えば、コンビニで一つのレジに3人のお客さんが並んだとします。すると最近では、すかさず他の店員さんがもう一つのレジを開けて、お客をさばくというシステムができあがっています。お客がこれに慣れてしまうと、もう一人の店員さんがレジを開けるのに手間取ったりするとすぐに、「何やってんだ。早くしろ」というムードになります。

これが外国ならどうでしょうか。外国ではレジに何人も並んだとしても、それが当たり前のようにのんびりと順番がくるのを待っているのが普通です。なぜ最近の日本は、こんなにせっかちになってしまったのでしょうか。

電車にしてもそうです。電車がちょっと遅れただけでも、駅員さんが胸ぐらをつかまれて殴られたり、罵声を浴びせられたりするケースが増えていると聞きます。電車が遅れたのは駅員さんのせいではないのに、そんなことが起きるのはなぜでしょうか。

それは、世の中が殺伐としてきて、お互いにコミュニケーションを取り合うとか、相手のことを理解して我慢するなどの風潮がうすれ、「問答無用」の世界になってきたからかもしれません。このような流れが進むと、今後の日本はどうなってしまうのか、一抹の不安を覚えます。