第111回 絶望の中を生き抜いた力
ヴィクトール・エミール・フランクルという人は、ドイツの精神科医で、第二次世界大戦の時、ナチスの強制収容所に送られました。彼は、その過酷な状況の中で生き抜くことができ、その経験を『夜と霧』という本に書いています。その強制収容所で生き延びた人たちは、どんな人たちだったのでしょうか。私は、歌人・カウンセラーである伊藤一彦氏の講演のダイジェスト文を読んで、とても驚きました。
普通その答は、「頑丈な人」だったと考えます。ですが、全くそうではないようです。それは、「心の繊細な人」だそうです。例えば、過酷な労働を強いられる毎日の中でも、美しい夕焼けを見て「ああ、きれいな夕焼けだ」と感動できる心の持ち主です。
人の性質として、「何かに集中しているときは、他のことは忘れられる」というものがあります。そのようなことをせず、死への不安を絶えず考え、それを打ち消そうとすればする程、逆に不安にとらわれてしまいます。そこで、困難に直面したときなどは、自分の一番好きなことをするのがいいようです。そのことに熱中すると、心が自由になります。そのようにできる人を、フランクルは「心が繊細な人」と言ったそうです。
自分自身を振り返ってみると、超多忙を極めたことや、困難に直面したことも時々ありましたが、そのような時に、テニスなどの自分の趣味が、追い詰められた自分を救ってくれたように思います。