第90回 観察力の大切さ
野菜を栽培していて、つくづく感じることがあります。それは観察力の大切さです。例えば、朝見た時には何ともなかったモロヘイヤの苗が、昼間に見ると、茎の根元から見事に切られたことがありました。もしこれを見落としてしまうと、他の苗も次々にこれと同じ運命をたどることになります。
一体これはどうしたことかと、切られた苗のまわりの土を探ると、2㎝くらいの茶色いイモ虫が出てきました。根切り虫です。この虫が苗の葉を食べたり、茎を切ったりしてしまうのです。慌てて捕殺し、それ以外にもいないか、他の場所も探ります。このような地道な観察をするかしないかで、野菜の収穫が変わってきます。
また、野菜を育てるにあたっては、「葉の色」の観察も大切です。一般的に、葉の色が濃い緑色になった場合は、肥料の与えすぎで、薄い場合はその反対です。例えば、トマトでは肥料を与えすぎると、葉や茎ばかりがどんどん太り、ちっとも実がなりません。私は、「肥料さえたくさん与えれば、大きな実ができる」と考えていましたが、それは大きな間違いでした。
苗の育ち初めの肥料を少なくすると、トマトの苗は「早く実をつけ、次の世代のために子孫を残さねば!」と危機感を感じ、早く実をつけるそうです。その時点で初めて追加の肥料を与え、できた実を太らせるのがいいようです。このトマトの育て方は、人間の子どもの教育とも似ていて、とても興味深く感じられました。