第497回 生きていく苦悩と生きる喜び
現在,ジェイコスモ(株)の代表取締役として人材育成などに精力的に活躍している大島修治氏の話を,日本講演新聞を通じて知りました。氏は20歳で起業しましたが,27歳のときに連鎖倒産の憂き目にあいました。しかしながらも盛り返し,40歳代で年商100億の企業主となりました。
その当時,何か恨みを持たれた人による仕業なのか,氏が事務所にいるときにガソリンをぶっかけられ,その体に火をつけられて,大火傷を負ってしまいました。
人間は体の60%以上に火傷を負うと死ぬと言われていますが,氏の火傷は体の65%にもおよぶ大火傷でした。氏はすぐにICUに入れられ,その間に5回の危篤状態になりましたが,奇跡的に生き延びました。
「俺は生きている!」と喜びを感じたのはつかぬ間,その後は生きることの苦しさにのたうち回りました。それは感染症を防ぐため,医師と看護師の総勢7名が毎日1時間半をかけて全身を消毒するという処置のためです。消毒液が傷に沁みて気絶するほど痛いのです。「こんな痛みが続くなら,いっそのこと殺してくれ!」と病院内に響き渡るほどの声で絶叫し,それが何日も続きました。同時に氏は,氏をそのような目にあわせた犯人を憎んで憎んで憎み抜きました。
しかしある時,氏は「あの頃の自分は傲慢で,どうしようもない至らぬ人間だった。だから神様が私に『お灸を据えてやろう』ということで,私にあの犯人を差し向けたのだろう。あの犯人は神様のお使いだったのではないか」ということに気がつきました。その瞬間「神様,ありがとう」と心の底から思えるようになり,氏の人生は変わっていきました。
過去に起きたことは変えられませんが,「今」をどう捉えて生きるかによって,未来は変えられます。氏が九死に一生を得たのは,そんな体験から得た教訓や喜びを多くの人に伝える使命を授かったからかもしれません。