第489回 スキーを楽しむ基本の基本

先日,北海道出張への合間に,スキーをする機会があり,久々に北海道の雪を楽しみました。さて,そこはもう日本ではなく,いろいろな国から来た外国人たちの楽しむワンダーランドのようでした。特に台湾や中国南部,フィリピンなどから来た外国人たちは,「雪を見るのも初めて」といった感じで,はしゃぎにはしゃいでいました。さてここで皆様に質問です。もし皆様がこの人たちのような初心者に対し,まずどのようなスキー技術から教えていきますか。

常識から言えば,まず,なだらかな斜面で両足を揃えてまっすぐ滑る直滑降を教え,それが出来るようになったら次にスキー板を「ハ」の字の形にした「ボーゲン」という「曲がる技術」に移るといった答えが返ってくるかもしれません。一方,私の考える練習方法は次の通りです。

1.緩やかな斜面で,まっすぐに10mほど滑ったら,体をわざと右か左に放り出して転ぶという,「正しい転び方」を学ぶ。
2.次にスキーの二枚の板を谷側に揃えて,ストックを使って立ち上がる方法を学ぶ。

スキーで一番怖いのは,スピードが出過ぎてスキー板をコントロールできなくなり,人や立木に衝突してしまうことです。このようになったときに大切なことは,「正しく転ぶ」ことです。正しく転べば衝突を回避できますが,そのような転び方ができず,そのまま突っ込んでいくと大事故につながります。
ただし,転んだとしてもスキー板がある真後ろに転んでしまうと,スキーは減速せずにどんどん先に進んでしまうので,それは「正しい転び方」とは言えません。このようなことから,「正しく転ぶ練習」は,自分の身を守るために大切なことなのです。それはちょうど柔道における「受け身の練習」と似ているかもしれませんね。

事実,先日の北海道のあるスキー場では,中国人の方が立木に正面衝突して亡くなられたという事故があったようです。それを知って私は「その方は正しい転び方を学んでいたのだろうか」と,とても悲しく思いました。スポーツにしても勉強においても,「学ぶ順序」や「原理・原則」に則って学んでいくことが大切だと感じます。