第482回 観察力と質問力
皆さんがいろいろな人とお付き合いする中で,「相手のことはさておいて,自分のことばかり喋る人」に出会ったことはありませんか。そういう人とは,だんだん疎遠になっていくことでしょう。
では,少しでも周りの人に好感を持ってもらえる人になるためには,どんなことに心がけたら良いのでしょうか。そんなことに興味を持った私は,東京銀座の超高級クラブの売れっ子ママさんが書いたある本を読んでみました。そしてその中で,そのママさんの初対面のお客様への接客態度に感心しました。
例えば,そのママさんは,初対面のお客様への最初の一言で「もしかしてお客様はゴルフをされませんか。」と発し,ズバリそれを当ててしまいます。当てられたお客様はビックリして,一瞬にしてそのママさんの魅力に取り込まれてしまいます。ではなぜそのママさんはお客様の趣味がゴルフであるということを見抜いたのでしょうか。
「顔が日焼けしているから?」いえ,違います。日焼けしているとしても,外回りの営業をしているからとか,テニスが趣味であるとかも考えられ,「ゴルフが趣味」とは断定できません。
答えは観察力です。
そのママさんはお客様の手をじっと観察したのです。ゴルフをする人は,ラウンドする時に左手だけに手袋をします。そのためにお客様の両手を観察すると,左手は白いのに,右手は日焼けしていることを発見できるのです。人に好かれる人は必ずといって良いほど観察力が優れています。その反対に,自分中心の人は相手に対して無関心です。
このことに気付いた私は,レストランなどで注文を取りに来た店員さんには真っ先にネームプレートを見るようにしています。そして注文後に「○○さん,ありがとう。よろしくね。」などと,その人の名前を言います。すると相手は一瞬ビックリしますが,すぐに笑顔になり親しくなれます。人は「相手から関心を持たれている」とか,「大切にされている」と感じると嬉しく思うものです。私はこのようなことをいろいろな場面で応用して,より良い人間関係を作っています。
さて次は質問力です。前述のママさんは観察力の次に質問力を発揮します。お客様の趣味がゴルフとわかったなら話は簡単です。「ゴルフは月に何回ぐらい行かれるのですか?」とか「どちらのコースへ行かれることが多いですか?」とか話はいくらでも広がります。そして質問をすればするほど,ママさんの頭の中にはお客様の情報が蓄積されます。するとそのお客様が次回来店された時には,「最近のゴルフの調子はいかがですか?」などの話から始めることができます。そこでお客は「ママさんは僕のことを覚えてくれていた」と感激し,その店の常連さんになる可能性が高まってきます。よく「話し上手は聴き上手」と言われますが,話し上手な人は決して「立て板に水」のように,とめどもなく言葉を発する人ではありません。それとは違って,「話し上手な人は観察力と質問力に秀でた人」と言えるのではないでしょうか。