第479回 ドンキの経営

皆さんはドンキ(ドン・キホーテ)のお店に入ったことはありませんか。ドンキの1号店は1989年に産声を上げ,以後,34期連続で増収を達成しています。なぜドンキはここまで急成長できたのでしょうか。

日本の小売業界の多くは,本部が店を完全にコントロールすることで一定の品質を保ちながら多店舗展開をするという方式をとっています。一方ドンキでは,「その方法を真似しても勝てるわけがない」という考えから,「どんな商品を仕入れ,いくらで売るのか,店のどこに並べて,どう売るのか」という権限をすべて現場に委ねるという方式をとりました。その結果,多店舗展開しながらも,個性を持った店が出来上がります。
またドンキでは,想定顧客に最も近い人が店員に選ばれます。実際,10~20代半ばのZ世代をターゲットにした「キラキラドンキ」のスタッフの平均年齢は19歳です。
ドンキでは「売り場」という言葉は使わず「買い場」と呼びます。売り場は店側から見た言葉ですが,来店客からすれば売り場ではなく買い場になるからです。そして,ドンキでは一般の店舗が目指している「便利さ」「安さ」にプラスして,「楽しさ」も追求しています。

このようなドンキのユニークな経営スタイルは,『進撃のドンキ』酒井大輔著〈日経BP〉に収録されています。その本の中で最も驚いたポイントは,創業者・安田隆夫氏が66歳を前に引退するときに起草された百数十ページにも及ぶ企業理念集「源流」です。スタッフ全員の行動規範やドンキの経営は,この理念集に従ってなされています。その仕組みを理解して,初めてドンキの真の強さを知ることができました。