第444回 「あしたあおうよ」の心がけ

先日,心理カウンセラーをされている森 薫(もり かおる)氏の本を読みました。

21世紀になって,多くの日本人の収入が減少し,生活にゆとりがなくなっています。2017年にOECDによって発表された調査によると,日本の相対的貧困率はOECD加盟国35か国中7番目に高く,G7中では米国に次いでワースト2位という高率です。子育て世代の女性の7割が働かなければ暮らしていけないのが現実です。

また,経済的ゆとりがなくなれば,心のゆとりもなくなります。すると,自分が生きることに精一杯となり,人の心配をしたり,世話をする余裕などなくなります。心身の免疫力が低下し,ストレスを溜めやすくなります。家庭内がギクシャクしてくると,子どもの心にも影響が及びます。不登校やひきこもり,ゲーム依存などの子どもが増えているのも,そのような環境の変化にも関連しているようです。氏の書かれた本を読んで,いろいろなことを知ることができ,自分の見識の狭さを思い知らされました。

そのうちの1つが「ひきこもりとゲーム依存」の問題です。不登校からひきこもりに陥った子どもたちの親が一番心配するのが,子どものゲーム依存でしょう。昼夜逆転の生活の中で,何かに取りつかれたように,ひたすらゲームに熱中する我が子の姿を見たら,心や体の心配と共に,「このまま一生この状態から抜け出せないのでは」と怯えてしまうのも無理のないことです。そのため,そんな子を守ろうとして,ゲーム機器を取り上げたり,費用の不払いなどの介入を行おうとしがちです。すると,この介入に対して子どもは激しく反発し,家庭内暴力や器物破壊行動につながることも少なくありません。しかし,これは子どもにとって,命綱を力づくで奪われるようなものだそうです。なぜなら,ひきこもりで昼夜逆転の状態にある子どもにとって,「死にたい」「自分は生きている価値があるのだろうか」などの不安から逃げることができる唯一の手段がゲームだからです。

こんな状態にある子どもに対して,親の取るべき態度は「我が子はゲームのおかげで生き延びてくれている」という心を持つことだそうです。私自身はゲーム依存について「時間制限を設けるなどして,徐々にゲーム依存の度合いを減らしていったらどうか」などと考えていましたので,このような考え方があることに,とても驚きました。ちなみに氏は,明るく元気な心を保つためには「あしたあおうよ」を心がけると良いと提唱されています。それは次のような心がけです。

あ…ありがとう
し…幸せ
た…楽しい
あ…愛してる
お…おかげさま
う…嬉しい
よ…よかった