第443回 言葉は釘の穴と同じ

時々私は「あの時あの人に対し,あんな言葉をぶつけるべきではなかった」と思い返すことがあります。また,「あの人から言われたあの言葉,あの人から受けた傷は,一生忘れることはないだろう」と思い出すこともあります。

先日,日本講演新聞で永業塾の中村信仁氏の文章を読んでいて,パソナ創業者の南部靖之(なんぶ やすゆき)氏の次のような言葉が目に留まりました。

「人を責めたり,叱ったり,皮肉ったりと,人は色々な言葉を発します。その後,『今のは間違い』と言って取り消したり謝ったりしても,相手の心にはしっかりとその言葉は残ってしまう。それは例えてみれば,間違って打ち込んだ釘を抜いて,正しく打ち直したとしても,最初に打ち込んだ釘の穴が残ってしまうようなものです」と…。

正にその通りで,一度発してしまった言葉は取り返しがつきません。言葉は衝動的に発するものではなく,発する前に一旦立ち止まってから伝えるべきものなのでしょう。また発する言葉の内容にしても,次のようなものは慎むべきだそうです。

〈慈雲尊者(じうんそんじゃ)(江戸時代のお坊さん)が残した「十善法語」にある言葉の四戒〉
(1)不妄語(ふもうご)…でたらめを言ってはいけない。
(2)不悪口(ふあっく)…人の悪口を言ってはいけない。
(3)不両舌(ふりょうぜつ)…人の仲違いを引き起こすようなことを言ってはいけない。
(4)不綺語(ふきご)…おべんちゃらを言ってはいけない。